<ジャンプ化するガンガン>

2004・6・28

 ブレイド組の移籍以降、大きく誌面が様変わりした少年ガンガンでありますが、編集者自身は「少年マンガ」の復興を目指しているようです。「まんがたうん」というサイトのオンライン雑誌のインタビュー記事で「かつての黄金期のジャンプのような活気を取り戻したい」という編集者のコメントを目にしたことからも明らかでしょう。
 ここでいう「少年マンガ」とは、「少年向けのマンガ」という意味ではないですよ。通例、「少年マンガ」と言えば、「熱血・バトル」要素が中心の、80年代ジャンプ作品に代表されるマンガを指します。

 雑誌とは編集者と作家による作品であり、作者たる編集者がどのような雑誌作りをしようとも、それは完全に自由です。しかし、それをふまえた上であえて言わせてもらうと、この「少年マンガ路線」が果たして面白いのかどうか、甚だ疑問なのです。

 まあ、今のガンガンが面白いかどうかは人によって様々な意見があり、絶対的に評価するのは難しいのですが、それでもひとつだけ断言できる具体的な事実があります。それは、今のガンガンが、他の大手少年誌と同じような雑誌になってしまったことです。大手少年誌の中でも、特にジャンプ(週刊少年ジャンプ)に似ています。


・徹底した「少年マンガ路線」の新連載。
 まず、ここ数年のガンガンの新連載を見る限り、徹底した少年マンガ路線を取っていることはひと目で分かります。この路線は、実はブレイド組移籍以前から進んでいたのですが、移籍後のリニューアル以来、その傾向がより顕著になりました。
 具体的には、「666(サタン)」「B壱」「パンツァークライン」「マジック・マスター」「私の救世主さま」「PHANTOM;DEAD OR ALIVE」「マテリアルパズル」「ドラゴンリバイブ」「女王騎士物語」「ソウルイーター」・・・。そして、あの「鋼の錬金術師」や「ドラゴンクエスト エデンの戦士たち」「ドラクエモンスターズ+」もこの中に入ります。「熱血」路線とは多少異なりますが、子供向け娯楽作品という意味では「グレペリ」もこの中に入れてよいでしょう。これらの連載群によって、この数年で一気に誌面が様変わりしました。
 これらの新連載群に言えることは、そのほとんどが「編集部側の主導で、少年マンガ路線を作るために連載が始まった」と言う点です。つまり、まず「少年マンガに満ちた誌面を作りたい」という編集部の思惑があり、それを実現するために適当な作家を選んで連載を始めた、ということ。作者が描きたいと思うマンガが「熱血バトル系少年マンガ」でない場合には、ガンガンではまず採用されない。スクエニのほかの雑誌での連載になるか、あるいは最初から連載させてもらえないケースがほとんどです。


・「少年マンガ的でない」連載は他の雑誌に飛ばされる。
 いや、実は少年マンガの枠にはまらない、作者の個性が強い作品もあるにはありました。ところが、それらの連載はほとんどの場合長続きせず、他の雑誌に飛ばされるケースが増えました。
 古くは「刻の大地」「ツインシグナル」のGファン移籍からこの流れが始まるわけですが、最もそれが顕著だったのが「妖幻の血」「ドームチルドレン」のパワード移籍、あとは「プラネットガーディアン」の終了かな。「ARTIFACT;RED」のWING移籍もそうかな。これらは、それぞれ作者の事情による移籍・終了という一面も濃いのですが、「それにしても、あえて移籍(終了)までさせる必要があったのか?」と疑いたくなるような点もまた多いです。「妖幻の血」「プラネットガーディアン」「ドームチルドレン」などは「鋼」「666(サタン)」「B壱」と同時期の新連載ですが、これらのマンガの作者がガンガンで連載を続けているのに比べると対照的です。結局のところ、今のガンガンは「少年マンガ的でない」連載を強引に排除してしまうほど、極端な偏重路線を歩んでいるといえるでしょう。


・「ラブコメ」というもうひとつの少年マンガ路線。
 そして「ながされて藍蘭島」「悪魔事典」に代表される「萌え系ラブコメ」も広い意味での少年誌的なマンガに入ります。
 勘違いしている方も多いのですが、「藍蘭島」や「悪魔事典」は必ずしも「美少女マニア」「オタク」だけを対象としたものではありません。むしろ、大手少年マンガ誌を強烈に意識した、少年マンガ路線を踏襲するものです。
 この手のラブコメは大手少年誌では昔から必ず存在しており、熱血系少年マンガと平行して少年読者の要求に答えてきました。今の少年誌でも健在で、例えばジャンプなら「いちご100%」、マガジンなら「ねぎま」に「スクールランブル」、サンデーなら「美鳥の日々」、チャンピオンなら「エイケン」と、この手のマンガが必ず1〜2作品は誌面に用意されています。ガンガンでの「藍蘭島」「悪魔事典」の連載も、このような大手少年誌的な誌面を目指した編集部の思惑に合わせたものと思われます。


・ゲームマンガですら少年マンガ的。
 そして、ゲーム系出版社であるスクエニの特徴であった「ゲームマンガ」の連載も、最近では少年マンガ的な内容になっています。
 「エデンの戦士たち」「ドラクエモンスターズ+」は藤原カムイ・吉崎観音の両ベテランによる少年マンガの復活の趣が強いですし、神田晶「スターオーシャン3」、壱河柳乃助「FFクリスタルクロニクル」も内容は少年マンガ的。マニア系の絵柄とも言える水城葵「スターオーシャンブルースフィア」でさえ、その内容はバトル&ラブコメ系の少年マンガに近い。
 つまり、今のガンガンでは、ゲームマンガまでも少年マンガ路線の中に組み込まれており、これに前述の作品を合わせた「少年マンガ的」な作品が誌面の大半を占めていると言えるでしょう。


・藤原カムイ・柴田亜美・城平京の作品は特別扱い。
 しかし、少数ながら少年マンガ路線ではない個性的な作品も存在します。
 藤原カムイの「エデンの戦士たち」は、最初こそ少年マンガ路線で始まったものの、次第にカムイ氏の個性が全面に出るようになり、今では氏独特の設定と深いテーマ性で魅せる重厚な作品になっています。
 柴田亜美の「PAPUWA」はかつての名作「南国少年パプワくん」の続編であり、彼女の個性的なギャグは今でも健在です。
 城平京原作の2作品「スパイラル」「ヴァンパイア十字界」は、どちらも原作者の個性が存分に発揮された作品です。作品の持つ独自性・作家性では抜きん出ており、今のガンガンでは異色の存在です。
 これらの作品は、いずれも大物作家(藤原カムイ・柴田亜美)、個性派の原作者(城平京)の作品ということで誌面でも一目置かれた、言わば特別扱いされている存在であって、これらの作品だけが唯一今のガンガンで生き残った「非・少年マンガ」と言えるでしょう。ジャンプの作品に当てはめれば「エデンの戦士たち」「PAPUWA」=「ジョジョ(スティール・ボール・ラン)」「こち亀」、「スパイラル」=「DEATH NOTE」と考えるとしっくり来ます。


・これが本当に面白い雑誌なのか。
 以上のように、とにかく今のガンガン編集部は「少年マンガ路線」を徹底して推し進めており、誌面の大半がその路線で埋まっています。どんな雑誌を作るかは編集者の自由であり、一読者が横から口を出す問題でもないのかも知れませんが、それでもあえて言いたい。これが本当に面白い雑誌なのか、と。
 先ほども書きましたが、先日「まんがたうん」というウェブサイトのオンライン雑誌で「鋼」の特集があり、そこでガンガン編集者のインタビュー記事が載っていました。そこでの編集者のコメントが、「これまでのキャラクター中心路線から少年マンガ路線に切り替えて誌面の刷新に努力してきたが、ここにきて『鋼の錬金術師』の大ヒットという形でその努力が実を結び、『わたしたちの少年マンガ路線は間違っていなかった』と実感している」というものでした。

 このコメントは必ずしも全面的には間違ってはいないと思いますが、しかし首を傾げたくなる疑問も多いのです。
 まず、「鋼」が大ヒットした最大の理由は、作者の荒川弘さんの実力がずば抜けていたからにほかなりません。「少年マンガだから受けた、少年マンガ路線が実を結んだ」と考えるのはあまりに一方的です。荒川さん独特の重厚なテーマ、巧みなエピソード構築、随所に入る軽妙なギャグ&コメディと、作者の持ち味・個性が全面に出ているからこそここまでの作品になったのです。何も「王道少年マンガだから」という理由だけで受けたのではないでしょう。

 さらには、もし「少年マンガ路線が間違っていなかった」というのなら、なぜ「鋼」以外に大したヒット作が出ていないのか。「鋼」一作しかヒット作が出ていないのに「少年マンガ路線が成功した」というのは、誇大表現以外の何者でもない。むしろ、今のガンガンは「鋼」のみが大人気で、それ以外は「鋼」のために存在感がほとんどなくなった凡作マンガの群れと化した印象が強いのです。少年マンガ路線以前からの連載である「スパイラル」がかろうじて誌面で個性を保っている状態。事実、今のガンガンで「鋼」の次に人気があるマンガは、相変わらず「スパイラル」でしょう。これでもまだ「少年マンガ路線」が成功したと言えるのか?

 今のガンガンは、「鋼」の大ヒットで一時的に新規購読者が増えている状態です。彼ら新規購読者が今のガンガンをどう思っているのかはさっぱりわかりませんが、わたしのような古参のガンガン読者から見れば、今のガンガンの誌面はまるで魅力がありません。どれも似たようなマンガでまるで個性がないし、誌面が平坦きわまりない。これではほかの大手少年マンガ(特にジャンプ)の誌面と大して変わらない。
 テーマ性も薄れ、子供だましのマンガが多くを占めるようになりました。王道の勧善懲悪もので、友情・努力・勇気を前面に押し出したものでしかない。「ツインシグナル」とか「刻の大地」とか「浪漫倶楽部」とか「ピースメーカー」とかどこへ行ったんだ。同じゲームマンガでも「ヴァルキリープロファイル」の方が断然面白かった。あれは少年マンガ路線に合わないという理由で、編集部が一年で強制的に打ち切らせたのが真相らしいが、実に惜しいことをしたものだ。


 ・・・と、ここまで批判ばかり書いてきましたが、そもそも雑誌は編集者と作者による作品であり、どんな雑誌にしようが編集者の完全な自由です。我々が安易に口を出す理由はありません。
 しかし、雑誌が面白いかどうかを見極めるのは読者です。買う買わないを決めるのは読者なのです。今のガンガンは「鋼」の人気で部数を保っていますが、一旦「鋼」ブームが終わった後でどうなるかはかなり微妙なところだと言えるでしょう。昔のガンガンならまんべんなく個性的なマンガが誌面に満ちていたので、ひとつくらい人気マンガが終わってもどうということはなかったんですが・・・。


(追記)
 上記の通り、ガンガン(雑誌)自体に対しては否定的な評価に終始しましたが、個々のマンガに関してはそんなに悪いとは思っていません。突出したものはないものの、それなりに読めるマンガは多い。「マテリアル・パズル」とか、新連載の「ソウルイーター」とか、中々いいのではないかと。
 ただ、個々の作品を取り出してみればそれなりに読めるものの、雑誌全体の印象は薄く、誌面はぱっとしない。今のガンガンは「個々の作品にはそれなりに読めるものも多いが、雑誌自体は大して面白くない」という非常に困った状態にあると言えます。


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