<ごっこブラザーズ>

2007・3・3

・これはまた地獄・堀田の再来か。
 「ごっこブラザーズ」は、少年ガンガン2007年2月号に掲載された読み切りで、わずか8ページに過ぎない短編のギャグマンガでした。おそらくはなんらかの休載の代理原稿に過ぎない存在だったと思われます。だが、しかし、これが大変な問題作だったのです。作者は新人(?)のまつしん

 このマンガは、かつてガンガン誌上で何度もギャグ読み切りを残し、そのあまりの低レベルぶりで物議を醸した「地獄ゆき」「堀田和哉」の作品に酷似しており、その極めて低レベルの作画と、読者に不快感のみを与える低劣な内容に終始した内容は、まさに地獄・堀田の再来を思わせるに十分でした。

 一応、地獄・堀田に比べれば、いくぶん作画のレベルは高いように思われますが、それにしてもおしなべて低レベルの拙い作画に終始しており、ましてその内容は、まさに「地獄・堀田のコピー?」と言ってもよいほど完全に一致しており、「よくこんな似たような新人を次から次へと連れてくるものだな」と、違う意味で感心してしまいました。


・まずは流行り物の安易なパロディからスタート。
 かつての地獄ゆき作品の特徴として、「流行ものを安易にパクったネタ」がありました。毎回毎回当時の流行ネタであるオリンピックや宮崎アニメ、映画のスターウォーズ等のネタを安易に採り入れる作品作りは、読者を腹立たせるには十分でした。

 そして、この「ごっこブラザーズ」でもそれは見事に健在であり、今回は、あのゲームセンターで大人気のカードゲームを低劣にパロディ化した「ボブ アンド ペリー」なるゲームが登場し、主人公の兄弟は、それを子供らしく真似をした「ボブ アンド ペリーごっこ」なるもので遊ぶことになります。
 そして、この「ボブ アンド ペリーごっこ」、そのあまりにも下品で低俗な内容に、ほとんどの読者が嫌悪感を持つであろうことは明白であり、まして元ネタのゲームが好きな人には相当腹立たしいものがあるでしょう。この作者が一体何を考えているのか、本当に理解に苦しみます。

 いや、これらのパロディネタは、本当に作者だけが考えているのでしょうか。実は、編集者の方でもこのような低劣なパロディネタにこだわり、それを意図的に採り入れているのかもしれません。


・気持ち悪さ全開の着せ替えごっこ。
 で、肝心のその「ボブ アンド ペリーごっこ」の内容なのですが、これは、元ネタのゲーム同様の「着せ替え」を自分たちで行うというもので、弟が選んだ着せ替えカードのコスチュームを、兄が実際に着ていくというものです。これが単なる着せ替えごっこであるならば、さして低劣なものでもないように見えます。しかし、これが実際には、あまりにも下品な選択の着せ替えに終始し、多くの読者が目を背けたくなるような気持ち悪いものになっていきました。

 まず、ヘアースタイルの選択から入るのですが、ここでいきなりネットリオールバック。これだけでもビジュアル的にはひどくいやらしい選択です。
 そして、次のドレスアップ(服)の選択では、ここでいきなりブリーフ一丁。この絵を見た瞬間に、誰もがこのマンガがどれだけひどいものか完璧に理解することでしょう。しかも、悪ノリが細かいことに、着せ替えカード名が「ブリーフLite クリスタルホワイト」などとなっており、ここでも流行りもの(もちろんニンテンドーDS)を露骨にパクったネタを採り入れています。
 そして、次にフットウェア(靴)の選択で、スーパーサンダルなる選択。ブリーフ一丁で踊り回りながらサンダルを履こうとするコマがなんとも言えません。
 そして最後に、今度はスペシャルアイテムの選択で、なぜかサスペンダー。これがなぜかすごい評価得点を記録しますが、その理由は不明です。むしろ、この絵を見てほとんどの読者は不快のどん底に叩き落されると思います。

 しかし、このマンガはこれだけでは終わりません。最後に最高にバカバカしく気持ち悪いビジュアルが待っています。


・この気持ち悪いダンスは何なのか。
 そして、この気持ち悪い着せ替えを終えた兄弟は、最後に元ネタのゲーム同様、そのコスチュームで踊ることになります。弟が選んだダンスステージはディスコだったのですが、それに対して兄が「じゃあディスコ・・・略してジャスコね!」などという意味不明な寒いギャグを発します。

 そして、本番のダンスがまた最高に素晴らしいもので、どうして作者はこんな絵ばかりを描きまくるのか、完全にあきれ返ります。もう読者に対して意図的に不快感を与えようとしているとしか思えません。

 そして、そのダンス中に、ある乱入者が登場し、意外でバカバカしいラストへと結びつきます。ただ、このラスト自体は、バカバカしいものの、意外性は高く、それなりに好印象なのですが、それをぶち壊しにするのが、あり得ないほど下品なネタと、それに対する編集者の悪ノリに満ちた煽り文です。読後感は最悪で、最初から最後までかつての地獄・堀田作品をなぞるかのような内容に終始しています。


・編集者による悪ノリも健在。
 そして、その編集者による悪ノリに満ちた煽り文もひどいものです。これもまた、かつての地獄・堀田作品では毎回見られた要素なのですが、今回も今回でまた徹底的に凝りまくっており、編集者の悪ノリも頂点に達した感があります。

 極めつけが、タイトルページにあるえらく細かい煽り文で、それにはまず大きな太字で全米が涙した!?などと書かれており、それに続いて、

  • ふたりの兄弟愛に、気づけば涙があふれていました(メアリィー 25歳)
  • 鳥肌が立ちました。感動の余韻で震えがとまりません(ジョニー 18歳)
  • 貧しい二人が協力している姿に胸をうたれました(アンソニー 53歳)
  • 兄弟っていいですね。家に帰ったら早速ママに弟をおねだりします(ジョン 32歳)
  • タイトルにだまされた。まつしんはスゴイ奴だ(ジェームズ キャメロン 46歳)
などと書かれており、このマンガの素晴らしさを強調する内容となっています。しかし、実際の内容は上記の通り下品で低俗極まりないものであり、そんなマンガの中で、この煽り文の存在は、完全に読者をバカにしているとしか思えないものとなっています。わたしなどは、最初にこの煽り文を見たときに、あまりにも長文で凝りまくったテキストを見て、それが何を意味するのかまったく分からず、マンガを読み終えてから「ああ、これは編集者の煽り文だったのか」とようやく気づくありさまでした。

 そして、前述のように、マンガの最後のエンディングでも下品極まりない煽り文が見られます。「引き裂かれる兄弟・・・。そして割れ目。」 最後の最後まで読者に不快感を与えることに抜かりはありません。


・これはどう見ても編集者に問題がある。
 さて、このような煽り文もそうなのですが、そもそも、こんなマンガの存在そのものについても、編集者の問題があります。
 このような低レベルのマンガを読んだ場合、まずどうしても作者に批判が集まってしまうのですが、本当に問題なのは編集者の方である場合も多いのです。
 そもそも、こんなひどいマンガを載せること自体が、大いに問題なのです。もし、作者があまりにもひどいマンガを描いた場合、それを止めるのは編集者の役割です。それを載せるべきではない。誰が読んでも面白くないマンガが載ってしまった場合、それは編集者の掲載判断の方に問題があるのです。

 そして、この「ごっこブラザーズ」は、おそらくは何らかの代理原稿だと考えられる掲載です。しかし、いくら代理原稿だからといって、このような低レベルに過ぎるマンガを載せる必要性があるとは思えません。もっと他にいくらでもましな作者、作品はあるはずなのです。もし、代理原稿でこのような作品しか確保できないのなら、それはそれで大きな問題ですが、ガンガンの場合、そこまで新人作家の質に問題があるとは思えません。純粋に編集者の編集姿勢が問題でしょう。
 そして、雑誌にこのようなマンガがひとつ載るだけで、読者への印象はあまりにも悪くなります。雑誌とは、そのすべての掲載作品のレベルによって成り立っているのであって、たとえ代理原稿であってもその内容を軽視するべきではありません。

 ましてこのマンガや、あるいは地獄・堀田作品に関しては、単なる内容レベルの低さのみならず、編集者の悪ノリさえ感じられるのです。度重なる掲載の連続と、毎回のごとく繰り返されるふざけた煽り文の数々を見れば、編集者がこれらのマンガのひどさを分かっていながらも、あえて悪ノリで載せている節があります。これはあまりにもふざけた編集姿勢であり、編集者の資質にまで疑問が及びます。


・これはもはやガンガンの病気ではないのか。
 さて、このマンガの原点として「地獄ゆき」「堀田和哉」の作品を盛んに採り上げましたが、実は、その前に「タケピロのハッスル列島」という低俗極まりないギャグマンガの連載もありました。このようなマンガは、ガンガンのお家騒動以後に掲載されるようになったのですが、しかしこうもたびたび掲載されるところを見ると、お家騒動後のガンガンの、この手の低俗ギャグマンガへのこだわりは、あまりにも凄まじいものがあります。

 そして、その「タケピロのハッスル列島」の連載は、2002年から2004年にかけて、2年近くに渡って行われました。その後、半年くらい間をおいて、あの「地獄ゆき」が読み切りを掲載するようになり、これが1年間近く続きました。そして、それが終わった後にまたしばらく間をおいて、2006年の始めごろから今度は「堀田和哉」が連載を開始。これも1年近く続き、それが掲載されなくなったと思ったら、今度はこのまつしん・・・。そして、このまつしんの作品は、次号のガンガンにももう一度掲載されています。また同じ道を辿るのでしょうか。

 もう、なんというか、これはもう定期的に訪れるガンガン特有の病気なのではないでしょうか。まるで、1年ごとにブームになっては消えていくお笑い芸人のように、1年ペースで低俗ギャグ作家が次々と現れては消えてゆくのです。
 しかし、これらお笑い芸人たちについては、一時的とはいえそれぞれ確かな面白さはあったわけですが、対してこのガンガンの低俗ギャグ作家たちには、面白さはまったく感じられず、単に読者に徹底的な不快感を振りまいては消滅していきます。もはや、これは路線変更後のガンガン特有の病理であると言えそうです。


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