<ジャングルはいつもハレのちグゥ(ハレグゥ)>
2001・11・7全面的に改訂・画像追加2007・1・22
「ジャングルはいつもハレのちグゥ」は、少年ガンガンの隔週刊行時代である1997年第4号から連載を開始し、現在(2007年1月)も連載継続中の作品です。作者は金田一蓮十郎。ただし、2003年の段階で100話に達した時点で、「ハレグゥ」とタイトルを変えて再スタートの形を採り、単行本も10巻で一旦終了、以後「ハレグゥ」のタイトルで1巻から単行本が発売されています。このふたつの作品は、タイトルこそ違えど、内容的には完全に同一であり、連載途中で作品のマンネリ化を防ぐ目的で、一旦タイトルを切り替えたにすぎないものです。無論、この記事でも、「ジャングルはいつもハレのちグゥ」と「ハレグゥ」は、完全に同じものとして扱います。 元々は、ガンガンの隔週刊行時代の開始という非常な古株の作品で、それから以後10年近く連載している形となっています。比較的早めに連載が終わる傾向にあるガンガン系マンガの中では、非常な長期連載であり、今では、これまでガンガン系で最長連載だった「ハーメルンのバイオリン弾き」の連載期間をも上回っています。
内容的には、これは大変に面白いギャグマンガであり、普段ガンガン系を読まないマンガ読者の間でも一様に評価は高く、TVアニメも大ヒットしました。ガンガン系でも最も一般的な人気を得た作品のひとつと言えるでしょう。しかし、ここ最近の数年間は、かつてほどの圧倒的な面白さはなくなってきた感が強く、ひどくマンネリ化したところも感じられます。
・準大賞受賞作がそのまま連載化。
さて、この「ジャングルはいつもハレのちグゥ」、元々は作者のマンガ賞投稿作であり、「第3回エニックス21世紀マンガ大賞」において、準大賞を受賞した作品でした。そして、これが投稿作の掲載の段階でかなりの話題を呼び、その高い評価のままに、ほとんどそのままの形で連載化されます。作者の初めての受賞作品が、そのまま連載化できたということで、作者にとっては非常に幸運だったと言えるでしょう。かつてのエニックスでは、投稿作がそのまま連載化されて人気を博するケースが多かったのですが、この金田一蓮十郎さんの連載はその最たるものと言えます。さて、この投稿作版の「ジャングルはいつもハレのちグゥ」、絵的には連載版よりもはるかに拙いものの、シュールなギャグの切れ味はすでに健在でした。この作品は、のちに、当時の4人の新人作家の投稿受賞作を集めた「エニックス21世紀漫画大賞セレクション」という単行本に収録されますが、その中でも最大の目玉がこの「ジャングルはいつもハレのちグゥ」だったことは言うまでもありません。いや、この単行本自体、半ば「ジャングルはいつもハレのちグゥ」を載せるために刊行されたようなところがありました。
・シュールなギャグが面白すぎる。
さて、このマンガは、典型的なギャグマンガであり、それも、非常識な設定やキャラクターを売りにした「シュール系のギャグ」として、その面白さは突出していました。元々、ガンガンは、「ギャグマンガが面白い雑誌」という定評があったのですが、その中でもこの「ハレグゥ」の面白さは抜きん出たものがありました。
内容的には、ジャングルに住む10歳の少年・ハレが、突然やってきた謎の少女・グゥの不可解な行動にいじられまくり、それに対して全力でツッコミを入れまくるというものです。グゥの特異なキャラクター性が非常に印象的ですが、他のジャングルの住人たちも一様に個性的で、唯一の常識人であるハレが、一人でツッコミ役をこなしている状態です。このような、主人公がツッコミ役というギャグマンガはガンガン系には多く、ガンガン系ギャグマンガのひとつの定番とも言えるでしょう。 とにかくグゥのキャラクター性が凄まじい。投稿作の読み切り版から異彩を放っていたキャラクターですが、連載版ではそのいやらしさがさらにパワーアップ(笑)。人間とは思えない奇怪な行動を取り、そしてあらゆる物を飲み込む事ができ、体内に広大な四次元空間を持っているという異様なキャラクター性が、幅広い読者に大いに受けました。
そして、グゥ以外にも、このようなシュールな設定が多数見られます。その最たるものが、「ポクテ」と呼ばれる謎の生物でしょう。一応はウサギ(のような生物)らしいのですが、その異様な外見と、「実は食べるとうまい」「集団で謎の生活を送る」「突然自害する」などというシュールな設定を持ち、これも読者の間でバカ受けしました。
・キャラクターも高い人気を獲得。
そして、この「ハレグゥ」は、典型的なギャグマンガでありながら、個性的なキャラクターにマニアックな人気がついた作品でもあります。シュールな作風で、絵的にも決して萌え系の絵とは言えないのですが、それにもかかわらずコアな人気を得ました。主人公とヒロインであるハレとグゥはもちろん、ジャングルでハレと学校生活を送る子供たちもみな個性的で、それぞれがみな大きな人気を獲得しました。加えて、前述の「ポクテ」のような、ジャングル(やグゥの体内)に住む人外の生物たちももちろん大人気。ギャグマンガでありながら、ガンガン系に特有の中性的な作風で、くせが少ない作画だったのが、人気を得た大きな要因でしょう。ギャグマンガでありながら、決してアクの強い絵柄ではなく、むしろかわいらしく親しみやすい絵柄であり、これもまた当時のガンガンのイメージをよく表していました。
その一方で、意外にもシビアでシリアスな設定のキャラクターも多く、特に、ハレの母親であるウェダと父親であるクライヴは、共に過去に大きなトラウマを持っていたりしますが、現在の性格は双方ともに毒が抜けており、そのあたりのギャップにも面白さがあります。そして、このようなシビアでシリアスな設定は、のちの金田一蓮十郎作品に受け継がれ、より青年誌的な作風へと進化する端緒となりました。
・エニックス系以外の読者にも幅広く評価された作品。
しかし、そのようにガンガン読者に対してコアなキャラクター人気を得る一方で、普段ガンガン系、エニックス系マンガを読まないような読者に対しても、実に幅広く人気を得た作品でもあるのです。あまりマンガを読まない一般層の読者から、より内容重視の本格的なマンガを好む「マンガ読み」な読者まで、多くの人に極めて高い評価をされました。実際、この金田一蓮十郎の作品は、同時期のガンガン系作品では、「浅野りん」の作品と並んで、エニックス外の読者に対してもよく読まれ、評価も高かったと記憶しています。とりわけ、ネット上でマンガのレビューサイトを持っているような、コアなマンガ読みの方たちの評価が一様に高い。なぜ、この金田一蓮十郎(あるいは浅野りん)の作品だけが、ここまで幅広く読まれ、マンガ読みの評価も高いのか。これは、普段からエニックス系マンガのほとんどを読んでいたわたしには、少々不思議に思える現象でした。このふたりの作品が、特に他のエニックス作品と大きな違いがあるようには思えなかったからです。
しかし、実際には、エニックス系のマンガというものは、コアなマンガ読みにとっては注目度の低いジャンルであり、普段はさほど目立つ評価もされていないところがありました。そんな中で、この金田一作品(あるいは浅野作品)は、エニックス系では数少ない、マンガ読みの好む作風を持つマンガだったのです。一見してマニアックなオタク向けの要素が薄く、むしろ作者のマンガに対するセンスの良さが感じられることが、その最大の要因でしょう。そのため、エニックスマンガの中でも、特にこのふたりの作品を高く評価する人が、実際にかなり多くいたようなのです。
・TVアニメも抜群の人気と評価を獲得。
そして、そんな幅広い人気に応える形で、2001年にTVアニメ化もされました。そして、これもまた実に幅広い人気を得ることに成功します。もともと原作が幅広く一般層に受ける優秀な作品であったことに加え、それ以上に制作者たちの実力と熱意も顕著に表れており、そのクオリティには見るべきものがありました。そのため、原作ファンだけでなく、アニメで初めて「ハレグゥ」を知ったアニメファンや一般の視聴者にも大いに楽しまれ、ビデオも非常に好調な売れ行きを示しました。あまりにも人気があったために、TVアニメ終了後も2回にわたって大規模なOVAシリーズが制作されたほどです。そしてこちらの方もTVアニメシリーズと変わらぬクオリティを発揮。今でも、この一連のアニメ版ハレグゥ作品は、よく出来た優秀なギャグアニメとして高い評価を維持しています。この当時までのエニックス系アニメ作品は、原作をうまく再現していなかったり、作画のクオリティが低かったりと、一様に評価が芳しくないものが多く、エニックス系アニメはあまりいい目では期待されていないところがありました(最近は必ずしもそうではない)。しかし、この「ハレグゥ」のTVアニメは、そんなエニックス系アニメの中では例外中の例外で、いい意味で周囲の予想を裏切ってくれました。
・ここ最近のマンネリ化、質の低下には大きな疑問が残る。
しかし、そのTVアニメの終了と前後して、あの「エニックスお家騒動」が起きてしまい、ガンガンの誌面が様変わりしたことで、「ハレグゥ」の勢いも多分に失われた感は否定できません。元々、騒動前のガンガンでは、他の連載作品と並んで、エニックス的で中性的な作風が映えていたのに対し、騒動後のガンガンでは、誌面での存在感もかなり薄れてしまいました。加えて、作品自体の長期連載化に伴い、マンネリ化の波が押し寄せてきた感も顕著です。そもそも「ジャングルはいつもハレのちグゥ」から「ハレグゥ」へとタイトルを変更したのも、タイトルを一新することでマンネリ化を防ごうとする意図が明白でした。しかし、その効果は上がっていないように思えます。以前と同じようなネタ、同じようなストーリーを繰り返すようになり、最近になって増えてきたシリアスなエピソードもいまいちです。以前ほどの盛り上がりや勢いに欠けてきたことは明白な状態でしょう。今のガンガンでは、むしろつまらないマンガのひとつになってきた感すらあります。
また、作者の金田一さん自身も、最近では他誌の、より高年齢向けのマンガの方へと興味がシフトしてきたように思えます。特に、ヤングガンガンでの連載である「ニコイチ」は、マンネリ化が顕著な「ハレグゥ」よりもはるかに面白く、最近ではこちらの方の評価がはるかに高いですね。これでは、もう「ハレグゥ」の方の連載には期待できないのが正直なところです。実際のところ、ここまで連載を長続きさせるよりは、早い時期にすっきりと終わらせるべきだったのではないでしょうか。ここ最近のガンガンは、かつてのような「早い時期にすっきり終わらせ、作者の次回作を積極的に打ち出す」という姿勢が影を潜め、勢いのないままでだらだらと続く連載が目立つ誌面になったように思えます。そして「ハレグゥ」も、まさにその典型とも言える一作品になってしまった。これは、かつての優れた名作にとって、決してよい結末ではないでしょう。早期の円満な終了を期待したいところです。
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