<サバンナの転校生/兄弟テニス>

2006・3・3

 これは、少年ガンガン2006年2月号に掲載された読み切り作品で、2本立てのギャグマンガです。作者は新人の堀田和哉


・これが本当に掲載レベルなのか。
 このマンガは、ガンガンに載った(載ってしまった)読み切りであることは間違いないのですが、しかし「本当にガンガン本誌に載るだけのレベルの作品なのか」、極めて疑問の多い作品でした。はっきりいってギャグマンガとしては最低レベルと言ってもよい作品でした。それに、ガンガンと言えば、スクウェア・エニックスの中でも中心と言える、最も発行部数も多い雑誌です。そんなガンガンに、ここまでレベルの低いマンガが載っていいのでしょうか。
 はっきり言って、これほどレベルの低い読み切り作品は、ガンガン以外の、よりマイナーなスクエニ雑誌でもありません。ガンガンWINGやGファンタジーの読み切りは、これよりもずっと安定していますし、ヤングガンガンも最近はそうです。唯一、初期のヤングガンガンで、エロばかりで全く内容のない読み切り作品が頻繁に掲載されていた時期があり、そのあたりの読み切りとレベル的には近いものがあるかもしれません。しかし、初期のヤングガンガンは、まだ誌面の方向性も定まっていない、創刊したての混沌期でした。それに比べれば、少年ガンガンはもう15年以上続いている雑誌ですし、もっとずっと安定しているはずの誌面です。マンガ賞の募集も頻繁に行っており、有望な新人も多数控えているはずです。そんな雑誌でこのような低レベルの読み切り作品を載せるとは、一体どういう了見なのでしょうか。


・ありえない絵のレベル。
 このマンガを目にすると、まずそのありえないほど低レベルな稚拙な絵柄に遭遇します。いくら新人の作品でも、このレベルの低さはありえません。この作者は、これでもマンガ賞で入選を受賞しているんですが、その当時から「このレベルで入選?」と思うほどの絵の下手さが目に付いて離れませんでした。が、この当時は、「まだ受賞第一作の新人だし、こんなものか」と思って多めにみていました。
 しかし、その今作は、その受賞第一作からもう半年以上も経過しているのに、まったく絵の成長が見られません。それどころか、一部劣っているのではないかと思えるところすらあります。これは一体どういうことなのか。なぜこのレベルの絵でガンガン本誌に読み切りが掲載できてしまうのか。

 実は、最近のガンガンでは、「ギャグマンガだから多少は絵が下手でも構わない」と思えるような風潮が頻繁に感じられるのです。この読み切り以前に載ったギャグ読み切りでも、全般的にその傾向が強いですし、読者によるギャグマンガ投稿ページである「2Pギャグ」の作品もまさにそうです(というか、2Pギャグの絵のレベルはかなりひどいものです)。どうも、今のガンガンの編集者は、「ギャグマンガだから絵は下手でいい」という考えを有しているように感じられるのです。
 しかし、この考えには正直納得できません。確かにギャグマンガは、本格的なストーリーマンガに比べれば、あまり高いレベルの絵は要求されない傾向にありますが、それでも「最低レベルの絵の力」は当然必要だと思うのです。本格的なストーリーマンガのような、凝った絵は必要ないかもしれませんが、それでも作者のセンスを感じられるような絵の力は必要なはずです。スクエニ系の作家でも、例えば金田一蓮十郎や氷川へきる、くぼたまこと等のギャグ作家の絵柄は、決して細部まで凝ったタイプの画力を感じる絵ではありませんが、それでも作者独自のセンス、個性は十分に感じられます。ギャグマンガでも絵の力は必要なのです。
 しかし、この堀田和哉の絵は、そのような力は感じられません。確かに他に似たような絵を描く人はいませんが、それはセンスや個性があるわけではなく、ただ単に下手なだけであり、全くもって読む気の失せる絵であることは間違いありません。


・内容も最悪。
 そして、絵だけでなく、ギャグマンガとしての内容も最悪と言ってよいでしょう。
 まず、肝心のギャグが全くもって笑えません。というか、そもそもどこで笑っていいのか分からないくらいなんですが、一体この作者は読者を本気で笑わせるつもりがあるのでしょうか。意味不明な一発ギャグの連打で、読めば読むほど泥沼にはまりこんでいくかのようです。
 そして、さらに問題なのが、「読者に不快感をもたらす気持ち悪いネタの数々」です。とにかく低劣なネタの嵐で、それを意図的に読者にぶちまけて不快感を与えようとしているのではないか、とすら感じられるのです。「いかに気持ち悪いネタを画面一杯にぶちまけるか」「いかに読者を不快な気分にさせるか」というその一点のみを目指したかのような、作者のゆがんだ創作精神が顕著に感じられます。

 しかも、この読み切り2本立ては、1本1本がそれぞれ雑誌の中の別の箇所に掲載されているのです。つまり、この号のガンガンの読者は、わざわざ2回もこのような不快な目に遭わされるわけで、まさに悪夢としか言いようのない雑誌の仕様だと言えます。

 まず、雑誌の前の方に載っていた「サバンナの転校生」ですが、こちらの方はまずその不快な気持ち悪いネタの嵐です。サバンナの草食動物たちとライオンが主な登場キャラクターなのですが、動物のかわいらしさは微塵もなく、全編を通して変態的な動物たちが意味も無く不快な気持ち悪いリアクションを続けまくるという、なんとも言いようのない内容でした。

 特に、「スクーピー」というシマウマのキャラクターがあまりにもひどく、あまりにも悪意全開でしかも変態的な彼の行動には、怒りのあまりに雑誌のページをこぶしで殴りつけそうになる有様でした。

 そして、雑誌の後の方に載っていた「兄弟テニス」ですが、こちらの方では幸いにも不快な気持ち悪いネタは控えめです。しかし、こちらの方はネタのすべてが死ぬほどバカバカしく寒いものばかりで、読んでいるうちに極寒地獄へと誘われます。一応テニスの勝負を扱ったマンガですが、あまりにもくだらない必殺技の応酬で、とてもではないが笑うことは出来ません。しかも、最後には「実はこれはテニスのテレビゲームだった」という、ほとんど夢オチにも等しいくだらないオチで、短気な読者ならこの時点で怒りだして雑誌を引き裂く可能性すらあります。

 それともうひとつ、このテニスの勝負を始める時にサーブ権を決める方法を、作中では「アップorダウン」としていますが、「これは『スムースorラフ』の間違いではないのか」という指摘が一部で上がっているようですが、はっきりいってこんな試合中にテニスの神を呼び出すようなリアリティのかけらもないテニスのマンガで、そのような些細なことはもうホントにどうでもいいのではないでしょうか。まあ、この作者がテニスの知識すらろくに知らないでマンガ描いているということだけは良く分かりますが・・・。


・「タケピロ」と「地獄ゆき」と「堀田和哉」の共通点。
 以上のように、ギャグマンガとしては、いやひとつのマンガ作品としても最悪の部類に入る堀田和哉の読み切り作品ですが、実は少し前のガンガンでも、これに匹敵するか、あるいはこれ以上に最悪なギャグマンガがいくつかありました。ひとつは「タケピロのハッスル列島」、そしてもうひとつが「地獄ゆき」(の作品)です。
 このふたつのギャグマンガも、とにかくひどすぎるマンガであり、しかも今回の堀田和哉作品と全く同じ要素を備えています。すなわち、

であります。実際、この三者には共通点が非常に多く、最近のガンガンのギャグマンガのひどさを象徴する作品群となっています。

 そして、このようなマンガが2度ならず3度までもガンガンに掲載されるということは、これは単なる偶然ではありえず、このようなマンガを意図的に選んで載せようという編集者の意思を強く感じざるを得ないのです。つまり、ガンガンの編集者が、このようなマンガを本気で面白いと思っていて、懲りずに何度でも載せ続けていると考えられるのです。
 考えてみれば、あの「タケピロのハッスル列島」は、あれだけ評判が悪かったにもかかわらず、延々と2年近くも掲載され続け、そしてあの「地獄ゆき」作品も、最悪中の最悪の出来であるにもかかわらず、なんとガンガンだけで5回も正式な読み切りが掲載されました。(投稿作品や4コママンガ、他誌での掲載も加えるともっと多くなります。)
 そして今回の堀田和哉は、これだけひどいマンガしか描けないにもかかわらず、なんと「スクウェア・エニックスマンガ大賞」で入選を受賞しているのです。その受賞作は、「お空の仲間たち」という作品ですが、はっきりいって全く面白くなく、「なぜこのマンガが入選なのか」非常に疑問でした。そして、このようなマンガを入選を受賞するような作品として認めているということは、ガンガンの編集者たちは本気でこの手のマンガを評価していると思われるのです。これでは、今後のガンガンのギャグマンガは、ますます暗澹とした絶望的なものになるだろうと予想できるのです。


・実はいやがらせなのか?
 しかし、同時に、この手のマンガがガンガンに載り続けるもうひとつの理由も考えられます。
 それは、ずばり、読者に対するいやがらせという、本来的にはありえないような理由です。
 例えば、今回の堀田和哉の読み切り作品でも、掲載時の担当編集者による煽り文(マンガの周りにある編集者によるコメント・紹介文)において、「はしやすめ読み切り」なるふざけた紹介コメントがついているのです。これは、ガンガンの連載マンガを雑誌の最初から読んできた読者に対して、「はしやすめ」(箸休め)として連載の合間で気軽に読んでほしい読み切り、という意味だと思われますが、実際のマンガの内容がここまでひどくては、到底はしやすめなどにはならないばかりか、逆に怒りが込み上げてきて余計疲れることは明白であり、もはやこの「はしやすめ読み切り」なる紹介文が、読者に対するいやがらせであるとしか思えないのです。
 しかも、その「はしやすめ読み切り」という紹介コメントのすぐそばで、「はしやすめ・・・といえど油ギッシュ!!エネルギッシュ!!」などという、さらなる読者に対するいやがらせのようなふざけた煽り文まで書かれており、もはや読者をバカにしきった編集者の悪ノリの意思以外感じられません。
 そして、このようなふざけた煽り文は、かつての「タケピロ」「地獄ゆき」でも頻繁に見られ、もはやこの手のギャグマンガの掲載が、編集者の読者に対するいやがらせの悪ノリ以外の何者でもない状態になっています。

 そしてもうひとつ、このようないやがらせを続けることによって、特定の読者の選別を行おうとしている節もあります。
 今のガンガンの編集者たちが、雑誌のメジャー化を目指して少年マンガ路線とスクエニゲームマンガ路線を採り、その路線を進めるために読者の低年齢化を図ろうとしていることは明白でしょう。そのためには、今の路線採用以前の主要な読者であった、高年齢のマニア読者層がむしろ邪魔であると考えられます。そして、まさにそのために、このような「高年齢のマニア層がいやがるような」低劣なギャグマンガを連載して高年齢の読者を遠ざけ、さらには、この手の低劣なギャグマンガをある程度喜んで受け入れる低年齢の子供の読者を引き込もうとしているのではないかと思われるのです。もちろん、これはあくまで個人的な推測でしかない意見ですが、しかし今のガンガンの誌面状況を見る限りでは、決してありえない話ではありません。
 しかし、もし仮にそうだとすると、それはあまりにもひどい話です。そもそも、このような低レベル極まりないマンガでは、たとえ子供ですら受け入れられるかどうか分かりません。単にガンガンの誌面の質を落とし、読者全体を遠ざけるだけの結果に終わるのではないでしょうか。

 まあ、どのような理由にせよ、このような低劣極まりないギャグマンガを何度でも載せ続けるような状況では、これからもガンガンという雑誌の先行きは、ますます暗く悲観的なものであると言わざるを得ないでしょう。


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