<魔探偵ロキ>
2001・11・899年の開始以来コンスタントに成長を続け、いまやガンガンを引っ張る存在にまでなったロキ様を紹介することにします。
このマンガはほぼ完全な新人による突然の連載ということで、開始当初はまるで話題にならなかったマンガです。初期発動は遅かったのですね。しかし、読んでみるとこれが非常に面白い。とても新人とは思えないほど完成しており、次第に少しずつではあるが人気を集め、ついにはガンガンを代表するマンガになります。エニックス系の新人作家の中でも、初期のころから作風が完成していたということで特異な存在といえます。(エニックス系の新人の場合、連載を重ねることで成長していく人が多いのです。)
さて、このマンガはまずタイトルが目を引きます。「探偵」なら普通なんだけど、それに「魔」の一文字がつくだけでまるでイメージが変わってきます。「魔」探偵というだけあって、これは普通の推理物ではありません。一応推理の要素は出てきますが、それはあくまで一要素に過ぎず、基本は推理やオカルト要素を絡めたサスペンスミステリーといった感じです。よく「このマンガは探偵なのに推理がないのはおかしい。」という人がいますが、そういう人は「このマンガはアイスホッケーをしてないのにアイスホッケー部なのはおかしい。」とか言うんでしょうか。よくわかりません。まあいずれにせよ的外れな批判といえるでしょう。
肝心の内容ですが、タイトル通りとにかくいろんな要素があってどれも楽しめます。きちんと探偵をしている回もありますし、オカルト要素に傾く回もあれば、登場人物の日常を扱った回もあります。また、主人公がロキ(北欧神話の邪神)であるということで、北欧神話の要素を絡めた大きなバックストーリーが存在し、神話のファンにとってはうれしい内容になっています。
しかし、このマンガの真の面白さはそのような設定の妙ではなく、むしろストーリー展開です。とにかく読んでいて、ページをめくっていて楽しいんですよ。単純にストーリーを追っていくだけで十分面白いわけです。時折入るユーモアやギャグの要素も楽しく、メリハリが利いていて非常によろしい。このあたり設定ばかりに気をとられて肝心のストーリーがおろそかになったマニア系のマンガとは一線を画しています。「マニア的な設定と、誰もが純粋に楽しめるストーリー」とが両立しているのです。単純に読んでいて楽しいのが最大の魅力。さらに絵の方でも見るべき点は多い。これがまず初期のころから完成していました。キャラクターがいいとか背景が書き込んであるとかじゃなくて(いや、そちらの点もいいんですが)、とにかく「マンガの絵としてうまい。」コマ割りの巧みさとか、ちょっとした小道具とか、そういった随所の工夫が光っており、実にマンガ的でよい。
とくにデフォルメされた表現がいいです。時折キャラクターや背景がデフォルメされて書かれるんですが、これが非常にいいメリハリを利かせています。ともすれば暗くなりがちなストーリーを和らげてくれる効果もあり、実にバランスがいい。
そしてもうひとつ、このマンガは「エニックス的な絵柄」であるということ! いや「男女を問わず受け入れられる中性的な絵柄」という意味なんですが。いや、こういうマンガがないとダメだよ(笑)。これこそがエニックス(なのか?)。さらに特筆すべきは、作者木下さくらさんの仕事に対する姿勢ですね。この熱心で精力的な姿勢には頭が下がります。とにかくサービス精神が旺盛で、上部の柱にオリジナルのカットを添えたり、単行本の後書きや書き足しに力を入れたり、しまいには初回特典でペーパーやしおりをつけたり、やるべきことはすべてやるといった感じで、この仕事熱心ぶりにはわたし自身も見習うべきところが大いにあります(笑)。
と、いうわけでこのマンガはストーリー的にも絵的にもマンガとして完成しており、誰にでも勧められる実に優等生な作品です。ただ最近は以前ほどの勢いがなくなっており、やや気がかりなんですが。ただこういった一話完結形式でストーリーが進むマンガというのは、どうしても途中で中だるみする時期があります。多少回によってばらつきがあるのはある程度は仕方がない。全体を通して観れば申し分の無い出来といえるんですが。
2002・2・1<移転に当たって追記>
出版社側の都合によって連載中断・移転というのはひどく残念である。ストーリーも佳境に入ってのことなので移転先できちんと連載を続けて、きちんと完結まで描き切ってほしい。
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